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【Story】No.2:Memoir

【岳】

「神代さんと付き合うにも琴音ちゃんと付き合うにも、僕としてはどっちでも良いんだけどさ」

「それこそ、陽翔も女の子と付き合いたいって気持ちを抱くようになっちまったか……感慨深いな」

【陽翔】

「え?」

【岳】

「いやだからさ、女の子だよ」

「女の子と付き合いたいって欲求だよ」

【陽翔】

「………はあ」

付き合いたい……か。

――思えば、恋愛って1番“青春”って感じの響きがするよな。

好きな人が居て、告白して、振られて、もしくは付き合ってリア充して……。そんなことに皆は熱狂するわけだ。

なんでだろうな。たかが人と人の関係が異なってくるだけの事実なのに。

【岳】

「昔の陽翔は”もう誰とも関わりたくない〜〜”って言っていたくせに、こんなことまで考えるようになってしまうとはね、およよ」

【陽翔】

「あ?バカにしてんのか?」

【岳】

「バカにはしてないさ、あの頃の陽翔と比較して面白がってるだけ」

【陽翔】

「あの頃ってーー俺と初めて話すようになった時か?」

【岳】

「そうそう、どっかの陽翔ってやつ、あまりに態度が酷かったよな」

【陽翔】

「……….まあな」

忘れもしない、あれは去年の春のこと。

俺は、人と関わることは無意味だと主張し続け、誰とも関わりのない学校生活を過ごして満足していた。

そのさなかに――岳が俺と関わりを持ちたいと話を持ちかけてきた。席が近かっただけという理由でだ。

俺は当然、人と関わることを拒否し、岳に否定的な態度を取り続けた。

それから数日して――岳は俺を、夜の屋上に呼び出した。

【岳】

「――君は、ここで自殺をしようとしたことがあるんだね」

その時に放たれた最初の一言は、俺の触れられたくない過去を確かに抉った。

【岳】

「それから君は、自分の過去を振り返りたくないからって……」

【陽翔】

「止めてくれないかよ!?」

【岳】

「それだよ。君の愚かな自尊心はそこにあるんだ」

【陽翔】

「お前に俺の何が分かるんだよ!!!」

その時の俺に残っていたのは――確かに愚かな自尊心だけだと今になって感じる。

【岳】

「……それで君は良いのかな」

「心の中では、君は誰かと比較して、惨めな思いになってるんじゃないかな」

【陽翔】

「俺はこれでいいんだよ、もうこれ以上人と関わったところで自分に残るのは何もないから」

【岳】

「だけど、目の前の現実にはジェラシーを感じてるんじゃないのかな?」

「それで狭い思いをさせたくないから、こうやって手を差し伸べてるんだ」

「あくまで、“本心”をぶつけ合う仲としてね」

【陽翔】

「そんな、初めて会うような人間に俺の“本心”なんてぶつけるだけ無駄だ、帰る」


【陽翔】

「”本心”をぶつけ合う仲、ねぇ……」

【岳】

「今こうして話してることは、陽翔の素直な”本心”なんじゃないの?」

【陽翔】

「正直俺はーーまだ岳の質問の意味がよく分かってないのかも知れない」

【岳】

「それも立派な”本心”じゃないか、理解できるまで話し合うのが僕たちのやるべきことさ」

【陽翔】

「そうか……」

ーーあの日の最後に、岳は俺と友達になりたい理由を、こう言っていた。


【岳】

「大丈夫、僕は“本心”で話せる人を求めていたから」

「よく見てみなよ、周りの奴らは『ぼっち』になりたくないからって話題に合わせようと必死なんだ」

「自分の意志を押し曲げてでも、流れからは逆らいたくないって便乗して友達関係を築いているんだ、肩身が狭くないか?」

「君のような存在を、僕も求めていたからさ。名前は?」

【陽翔】

「………、東雲……陽翔だ」

【岳】

「じゃあ陽翔でいいか。どうせ本心で語り合える仲になるんだし」

「僕は佐伯岳、岳って呼んでくれ」


ーー岳の質問の意味を理解するためには、こちらから意見を出してみることも大切なように思えてくる。

”本心”で話せる仲を岳が願ったなら、俺もその気持ちに応える必要があるように思うからだ。

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