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「中高生が、自分たちの理想を叶える。」 Noel Worksが提供する「天穹の境界線」公式HPです。


【Story】No.1:金曜日の話

【陽翔】

「……自分のことを、分かってもらいたかったのか?」

【シエル】

「そういうことなのかもね、なんて」

――ふわっと、秋風に神代さんの髪が揺れる。

それを掻き分けて、また俺と目を合わせる。

【陽翔】

「……なんだ、良かったじゃん」

――生憎、俺には神代さんに合わせられる趣味とか持っていないものだから……疎遠なままになるのかな。

【陽翔】

「俺はお役御免になるのかな……」

【シエル】

「何よ、東雲くんが居てくれなきゃ、こうやって幸せな気持ちにはなれなかったんだよ?」

【陽翔】

「俺はきっかけを作ったまでだ、それ以上は……」

【シエル】

「……それじゃあ、こういう話を東雲くんにしかしてない理由は分かっているの?」

【陽翔】

「“《未公開要素》”ってことを明かさないため」

【シエル】

「……東雲くんの方が“言葉”ってものに囚えられているんじゃないのかしら?」

【陽翔】

「それ以外に出てきません、生憎頭が悪いもので」

【シエル】

「仕方ない人ね……」

――俺と彼女の距離が、一気に狭まった。

声が近くなるのにも気が付かず、なびく髪に見惚れていた。

【シエル】

「東雲くんは、“特別な人“なの」

【陽翔】

「…………!?」

小さく耳元で囁いた声が、やけにくすぐったい。

【陽翔】

「どういうことだよ……」

【シエル】

「素直に自分の想いを話せるのよ、女の子同士で話してる時はテンポが速すぎて気が付けば他の話題になっていて……」

「だけど、東雲くんは待ってくれるの。自分の気持ちがまとまるまで、待ってくれるから」

【陽翔】

「そりゃ、自分の勢いで話を進められるほど話すのは上手くないし……」

【シエル】

「私は“好き”だよ、東雲くんのそういう所が」

――好き。

途端、自分の頭の中の思考が全てブラックアウトする。

【陽翔】

「好きって……」

――待ってくれよ、これは言葉通りに受け取るべきだよな?

脈があるだのないだの、そういうわけじゃないよな?それに神代さんはそういう言葉の含蓄には不慣れなだけだよな?

【陽翔】

「……神代さん」

【シエル】

「はい?」

【陽翔】

「神代さんって……帰国子女?」

――静寂が、静かに訪れた。

【シエル】

「……どうかしら」

「まだ私からは言えないかもね、なんて」

【陽翔】

「……そうか」

ーーまだ、俺とは一定の距離を置きたいってことか。

確かに今まで神代さんにはグイグイ押していた感じもするし……

【シエル】

「じゃあ、私はここで失礼するわ」

【陽翔】

「そうか、普段教会から学校に行っているもんな」

【シエル】

「……あのね、東雲くん」

ーーやけによそよそしくなる神代さん。

何か、言いにくいことでもあるのだろうか?

【陽翔】

「どうした?別に言いにくいことなら良いんだけれど」

【シエル】

「……あのね、私ね」

ーーごくり。

唾を飲んで、神代さんの言葉を待つ。

ーーまさか、告白とか?

【シエル】

「明日から、一緒に……」

「……学校に行ってもいいですか?」

ーー真剣な表情で、それでも紅潮した顔で俺に聞いてくる。

予想よりも可愛い依頼だったからか、余計におかしく思えてくるけど……。

これが神代さんのやり方で、ゆっくりのペースで仲良くなりたいという神代さんの願望なら。

【陽翔】

「……琴音がうるさいと思うけど、それで良いんだったら」

【シエル】

「全然構わないわ!!」

【陽翔】

「ふっ……それなら話は早いや」

不敵な笑みを、俺は零しているのだろう。

【陽翔】

「だけど1つだけ」

「明日は土曜だから、学校はないよ」

【シエル】

「………えっ?」

「ま、まさか、私明日なんて言ってた?!」

ぷしゅぅ〜〜と今にも湯気が立ちそうなくらい、神代さんは動転していた。

別にそれくらいよくある間違いだって思うんだけどな……。

【シエル】

「ご、ご、ごめんにぇ!!わ、わた、わたち、かえりゅから〜〜!!」

【陽翔】

「あ、ああ……」

一目散に神代さんは、教会の中へ消えていった。

【陽翔】

「……なんだよ、最後の」

俺がおかしくなって、今更笑えてきてしまう。

めちゃくちゃ噛んでたな……少しだけ面白がっていた。

【陽翔】

「じゃあ俺は琴音に話をつけておかないとな」

ーーこれからの日々を変えたいと願っているのは事実。

だけど、変わらない日々はまだーー。

俺はまだ、これから向き合わなければいけない過去に、向き合うつもりはなかった。

それは、神代さんに貢献したいと願うことで、精一杯になっていたからだろうか。

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